創業者の神谷恒一は故郷の高浜を離れ、東京で盆栽鉢の作家兼問屋として活躍していた。戦時中、転業を余儀なくされ、腕時計用針の製造を始めたことから、精密部品を手がけるようになった。

三�eグループは、得意分野である“精密なモノづくり”を追求していった結果、独自の超小型精密成型技術（プリンタ部品、腕時計用歯車など）、超薄肉成型技術（複写機用機構部品など）、異種材一体成型技術（夜間照明の付くパワーウィンドウスイッチなど）を確立し、その技術を見込んだ大手ブランドのプリンタ、事務機、デジタルカメラ、ベアリング、医療機器等に欠かせない数多くの精密部品を提供しつづけている。

同社の２色成形技術によってＡＢＳ（アクリロトリル・ブタジエン・スチレン樹脂）やＰＣ（ポリカーボネイト）などの異なる色や材質の素材が組み合わされ、見事なパーツが完成していく様を見ると、日本のモノづくりは当地が支えているのだ、という実感が沸いてくる。

社長自身が社員一人ひとりと対話できる環境作りをしてきたことにより、本人の希望と適性次第で、どんどん新しいことにチャレンジさせていることもこの会社が伸びている特色のひとつだ。

あらゆる業界からどのような要請がきても、オーダー以上のモノを作ることのできる体制づくりに役立っている。「三州から本社工場を動かすつもりはありません」。多くの企業が中国を中心に海外へ活路を求めるのを尻目に、この地で高品質のモノづくりを続ける、この姿勢こそが結果として『天下の下請け』になってみせる、という決意に表われている。