令和3年(2021年) 年頭所感

 

 明けましておめでとうございます。
 皆様には、令和3年の新春を健やかにお迎えのこととお慶び申し上げます。

 昨年は、新型コロナウイルス感染症が瞬く間に全世界に拡大し、健康被害はもとより、製造業のみならず観光やサービス業など非製造業に至るまで全業種に亘り大きな経済的な打撃を受け、大恐慌以来の未曽有の事態に直面した大変厳しい年でありました。

名古屋商工会議所 会頭 山本 亜土 名古屋商工会議所 
会頭 山本 亜土

閉塞感の打破

 企業は業種を問わず需要が蒸発してしまうというかつて経験したことのない事態に見舞われ、特に中小・小規模事業者は極めて厳しい経営環境に置かれています。国や自治体等の支援策を最大限に活用し、ギリギリのところで耐え忍んではいるものの、コロナへの決め手もなく、厳しい経済情勢がさらに長期化することが予想され、倒産や廃業が急増することを強く懸念しております。このため、今後感染の波が再来しても経済活動レベルを極力落とさなくて済むよう、感染の拡大防止と社会経済活動が両立できる環境を国が改めて整備をすることが必要となっています。
 一方、コロナ禍が長期化する中では、我々経営者も自ら気概を持って、知恵と工夫を最大限に発揮して、この苦難を乗り切る懸命な努力が必要だと思っております。相手がウィルスだけに、先を見通すことが困難な中、変化への対応力が求められています。中小企業の経営者の皆様は、現場の課題を日頃からよくよく熟知されており、環境の変化に大胆かつ素早く対処していくことが可能な筈です。したがって、コロナを契機として新商品やサービス開発、デジタル化などに積極的に挑戦することで、コロナ禍を十分克服していけるものと確信しております。
 新型コロナウイルスであっても、必ず終息する時が来ます。その暁には、恐らく経済構造や消費行動も大きく変わっていることが予見されます。厳しく、難しい状況だと思われますが、新しい動きを探り、新しい試みに敢えて挑戦し、この閉塞感を打破し、明るい希望の持てる社会を実現していくことが必要なのではないでしょうか。

中小企業の事業継続とデジタル化への対応、ビジネスマッチング

 商工会議所としては、まずは地域経済の担い手である中小・小規模事業者の事業継続に向けた支援をしっかりと継続して参ります。
今後も総勢約70名の経営指導員による巡回や窓口対応などきめ細やかな「伴走型支援」を徹底しつつ、昨年秋からスタートした「オンライン経営相談」の普及を図り、より柔軟で充実したサポート体制を構築して参ります。
 また、名古屋中小企業 IT 化推進コンソーシアム(Pit-Nagoya)による生産性向上に向けた「IT活用」や「セキュリティ対策」などのデジタル化支援に加えて、会員の皆様から多くの期待をお寄せいただいている「メッセナゴヤ」をはじめとする商談会や交流会事業は、「リアル開催」「オンライン開催」、これらを併用した「ハイブリッド開催」など、ニーズや効果を踏まえながらウィズコロナ、アフターコロナ時代に適応できるビジネスチャンスの創出に注力を致します。

産業の大変革への対応/イノベーション・スタートアップの創出

 5G等の通信技術やセンシング技術、AI等の発達により情報の高度利用が進み産業の大変革は着実に、そして加速度的に進むものと思われます。
 その対応の鍵を握るのがデジタル・トランスフォーメーション(DX)とイノベーションにあると考えております。
 そこで、「DXワールド」や「デジタルフェア」の開催を通じ、企業のDXを積極的に支援するとともに、サテライトオフィスを設け運営協力するインキュベーション施設の「なごのキャンパス」では、創業や事業計画など様々な相談に対応しつつ、ビジネスマッチングや新たな分野での人脈の形成を支援することで、地域発のイノベーション・スタートアップを創出する「火付け役」としての役割をしっかりと果たして参りたいと思います。

東京一極集中の是正に向けたインフラ整備と地域の魅力向上

 新型コロナウイルスの感染拡大により、人口や企業あるいは情報が首都圏に過度に集中していることのリスクが改めて問題だと懸念する人が増加しています。また、自然災害の頻発する我が国においては、国土強靭化やリダンダンシー(代替性)の確保が喫緊の課題だと思われます。
 このため、私どもは東京一極集中の是正に向けた提言を近々に取りまとめ、政府に対して所要の政策を講じるよう呼びかけるとともに、この地域の機能強化に向けた取り組みを鋭意進めて参ります。特に、日本の中央に位置する当地は、リニア中央新幹線の早期全線開業と中部国際空港の2本目滑走路、そして名古屋駅のスーパーターミナル化が実現することで、スーパーメガリージョンのセンター(中央)として、首都圏のバックアップ機能を十分に備えた地域と成り得ると考えております。
 また、東京一極集中の是正にはこの地域の魅力度向上も大変重要な要素です。経済活動の本格的な再開が期待されるアフターコロナも見据え、東京・首都圏に負けない「なごやの街の魅力」を高めていく努力を経済界や行政それに市民の皆様を巻き込んで継続していく必要があると思います。 
 その一つとして、商工会議所では新しく「和菓子土産」を作り出すことや街の雰囲気に似合って食べ歩きに適した「ワンハンドフード」の開発、街の賑わい創出につながる「まちなかマルシェ」など、新しい試みに挑戦しております。こうしたことを通じて、新製品の開発や販路開拓などに積極的に挑戦する中小企業の後押しをしながら、引き続き「躍動し愛されるナゴヤ」の実現に邁進して参ります。

むすび

 現在、世界中でワクチンや治療薬の開発が急がれており、春先には日本でも接種が始められる兆しも出て参りました。1日も早く安全で有効な薬が普及することで、明るく希望の持てる社会が取り戻せることを願っております。
 名古屋商工会議所は地域の皆様に支えられ、今年で創立140周年を迎えます。今後もコロナ禍の厳しい現状の打破と新たな飛躍に向け、企業の発展、ひいては地域経済の再生に向けて取り組んで参りますので、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

2021年1月1日

以 上

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